タトゥー施術大阪地裁判決(2017年9月27日)
2017年9月27日、医師免許を持たずに客にタトゥー(入れ墨)を施したとして、医師法違反(無資格医業)の罪に問われた彫師の判決公判が大阪地裁でありました。
裁判長は「保健衛生上の危害が出る恐れがあり、医療行為に当たる」と述べ、罰金15万円を言い渡しました(求刑罰金30万円)。
弁護側は即日、控訴しました。
医師法にはタトゥーの施術に関する明文規定はなく、彫師を巡る初の正式裁判として注目されていました。
判決によると、被告は2014年7月~15年3月、大阪府吹田市の店で、医師免許がないのに客3人にタトゥーを施したとして15年8月に略式起訴されました。
翌月、略式命令を受けましたが拒否し、正式裁判を申し立てていました。
公判で弁護側は、タトゥー施術は病気治療などが目的の医療行為ではなく、憲法が保障する職業選択や表現の自由にも反するとして無罪を訴えていました。
争点は、主に以下です。
- タトゥーを施すことが、医師法が定める医療行為に当たるか
- 「医師でなければ医療行為をしてはならない」と定めた医師法の条文は、憲法が認める「職業選択の自由」や「表現の自由」等に違反するか
このうち、タトゥー施術が医療行為にあたるかどうかが、最大の争点となりました。
判決は、医師法の定める「医業」について、医師が行わなければ保健衛生上の危害を生ずるおそれがある行為だと指摘し、施術で針を皮膚に突き刺す行為について細菌やウイルスが侵入しやすくなり、皮膚障害を起こす危険性があり、医学的知識や技能が不可欠なため医師が行うべきだ(医師免許が必要)と認定しました。
職業選択や表現の自由については、施術する人やされる人に「憲法上保障される権利」があるとしても、健康被害を防ぐことが優先されると言及、施術は違法としました。
被告が施術場所を清掃したり、施術用具を滅菌処理したりして衛生管理に努め、客に健康被害が生じていないことも考慮し、求刑から減額して罰金15万円としました。
入れ墨を施す行為は戦前の「警察犯処罰令」で禁止されていましたが、1948年に廃止されました。
その後、入れ墨禁止の明文規定はなく、長年容認されてきました。
しかし、厚生労働省が2001年、針で眉などを描くアートメークで健康被害が出たことを受けて、「針で色素を付ける行為は医療に当たる」との通達を出しました。
※ 参考 「医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて(平成13年11月8日医政医発第105号厚生労働省通知)」
第1 脱毛行為等に対する医師法の適用
以下に示す行為は、医師が行うのでなければ保健衛生上危害の生ずるおそれのある行為であり、医師免許を有しない者が業として行えば医師法第17条に違反すること。
(1) 用いる機器が医療用であるか否かを問わず、レーザー光線又はその他の強力なエネルギーを有する光線を毛根部分に照射し、毛乳頭、皮脂腺開口部等を破壊する行為
(2) 針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為
(3) 酸等の化学薬品を皮膚に塗布して、しわ、しみ等に対して表皮剥離を行う行為
第2 違反行為に対する指導等
違反行為に関する情報に接した際には、実態を調査した上、行為の速やかな停止を勧告するなど必要な指導を行うほか、指導を行っても改善がみられないなど、悪質な場合においては、刑事訴訟法第239条の規定に基づく告発を念頭に置きつつ、警察と適切な連携を図られたいこと。
※ 参考 「医師法第17条」
第十七条 医師でなければ、医業をなしてはならない。